小売業や接客業をしていると、避けては通れないクレーム。
もちろんこちらの不手際から起こるクレームもありますが、明らかに理不尽なクレームもあります。
様々なクレームを対応してきた中で、クレーム対応の基本を押さえることができれば、早期解決につながると感じたので、今回はお伝えします。
クレーム対応のフレームワーク
①聞き取り
②事実の確認
③方針の決定
④回答⇒解決へ
クレーム対応には上記のような4つのステップがあります。
常に今自たちはどのステップにいるのか?何をしなければならないのか?を考えて行動することが求められます。
そのステップですべきことだけを「徹底的に」「妥協なく」実施することが重要です。
もし対応している中で悪質なクレームと判断した場合、この4つのステップをさらに徹底して対応にあたりましょう。
早期解決を目指して迅速な対応をすることは重要ですが、急ぐあまり①~④のステップを1つでもとばしてしまうと、最終的な判断を誤る場合があります。
繰り返しになりますが、1つ1つのステップを徹底的に対応するようにしましょう。
すべてのプロセスにおいて、相手方との対応は努めて真摯・丁寧に行いましょう。
またクレームによっては担当者だけで判断せず、組織的に判断・対応をしていくようチームワークも求められます。
①聞き取り
とにかくお話をよく聞く!
当たり前のことに思われるかもしれませんが、すべての対応のスタートであり、対応の成否の分かれ目になります。
住所・氏名等、クレームの内容、被害の内容、資料・根拠の有無、要望等を漏れなく、詳細に聞きましょう。
聞く時のポイントは、5W1H(いつ、どこで、誰が、誰に、何を、どのように)を意識して聞きましょう。
その際、主張や要望の内容が妥当であるかどうかは問題ではなく、淡々と丁寧に、結論を急がず、我慢して、粘り強く、できるだけ具体的に聞きましょう。
話を聞きながら、時には懐疑的な気持ちも必要です。疑問点があれば躊躇なく質問をしましょう。
注意点としては、内心は表に出さず、肯定的な態度で聞き取ることが必要です。
この①のステップでは、聞くだけです。
自分の意見を述べる必要もありませんし、相手が結論を急ごうとしても、「まずはお話をよく聞かせてください」と伝え、回答は(回答ステップ④)で答えるので、聞くことに徹しましょう。
クレームの内容はしっかりと記録に残しましょう。
②事実の確認
どのような事実があったのかを確認する。
お客様の申し立てについて、レジの記録、防犯カメラの確認、商品の回収・確認、メーカーへの問い合わせなど必要な調査を行う。
ここで大切なことは、「これ以上調べようがない」というところまで妥協なく調査をすることです。
徹底して調査することで、会社として判断する際の合理性を担保する必要があります。
事実確認が不足していると、お客様と議論がかみ合わず十分な対応ができなかったり、会社の方針が二転三転して、クレームが泥沼化したりします。
また同様の事例に対して、再発防止のための対策もとれなくなります。
事実認定は、「組織的」に「社会常識」について行いましょう。
担当者だけの判断や、価値観で対応すると間違った方向にいくこともあります。
このステップでは、対応方針(ステップ③)をまだ考えず、回答(ステップ④)もしません。
③方針の決定
ステップ②の事実をもとに、対応方針を決める。
このステップで初めて回答・対応方法、回答・対応内容、その他関係事項を決めます。
回答・対応方法は、独断で判断せず、組織的に判断しましょう。
事実確認に不足がある場合はステップ②に戻り、再度必要な事実確認を行いましょう。
重要なクレームへの対応方針は、社内各部署(法務、総務、情報、人事等)と協議しながら決定しましょう。
このステップでは、対応方針を聞かれても、まだ回答(ステップ④)はしません。
「まだ回答はないのか?」「早く対応しろ」などと、急がされたり圧力的な態度をとられたりしても、「申し訳ありません。社内にて検討中ですので、もうしばらくお待ちください」と冷静に対応しましょう。
④回答
ステップ③で決定した方針を、きちんと相手に伝える。
このステップで初めて回答しましょう。
回答内容・方法は、ステップ③で決めた通り対応しましょう。担当者は悩まず、決めたことを伝えましょう。
誠意をもって、愚直に、親切丁寧に、伝わるまで繰り返し伝えましょう。
社会常識として、企業の消費者に対する説明として、通常要求されるレベルの説明義務を質・量とも果たしましょう。過剰な要求には、毅然とした態度でお断りしましょう。
決定した方針は。「会社の最終判断」として回答し、何を言われても回答は変更しないようにします。
もし新しい事実が出てきたらステップ①や②に差し戻して対応しますが、それ以外は変更しません。
④回答(解決)
ステップ④を達成したら、クローズとする。
回答の理想的なゴールは「相手方の納得」です。
「相手方の納得」を目指して、説明義務を果たしていきましょう。
ただし、納得するかどうかは相手次第になるので、必ずしも納得して終われるわけではありません。
そもそも、回答(ステップ④)とは、ステップ③で決定した方針を、きちんと相手に伝えることです。
十分な検討を行い、質・量ともに十分な説明を行ったにも関わらず納得を得られない場合は、ステップ④(=「ステップ③の対応方針を正確にお伝えすること」)の達成をもって、ゴールと判断しましょう。
クレーマーの本質、クレーマー対応の本質
先ほどの①~④のプロセスは、企業人としての基本動作で、誰でもできるし、普段からできていると思います。
クレーマーは、①~④のプロセスを壊そうとします。これが注意が必要です。
例えば、怒鳴ったり、高圧的に攻撃してくることで、こちらの正確なプロセスを混乱させようとします。
そして、通常のプロセスから外れた「特別な対応」を迫ってきます。
対策・防御策としては、危険度(リスク)に応じて①~④の徹底度を高めましょう。
クレームを受けた時に、「あぶないな」と思ったら、①~④のプロセスを逆に死守して、冷静に対応しましょう。
クレーム対応時の心構え
繰り返しになりますが、①~④のステップを意識して対応しましょう。
できるだけ複数人での対応が望ましいです。
例えば、店舗で対応を余儀なくされる場合であっても密室で1対1にならないように注意しましょう。
他にお客様がいたとしてもやむを得ないので、他のお客様に見られたとしても恥ずかしくない対応を心がけましょう。
複数人でも対応が難しく、個別対応する場合は、その対応の「獲得目標」を意識して、対応しましょう。
例えば、聞き取りの段階であれば「今日はとにかくお話を聞こう」と目標をもち、反論や回答はせず、徹底的に話を聞きましょう。
冷静に対応しましょう。冷静な対応とは、冷淡な対応ではなく、毅然とした対応です。無理なものは無理、ダメなものはダメを毅然とした対応でお伝えしましょう。
丁寧に対応しましょう。丁寧な対応とは、相手の要求を受け入れる対応でなく、事実関係を一つ一つ確認しながら、解決に向けて進めることです。
憶測やその場しのぎの言い逃れはしないよう注意しましょう。後からそこを指摘されると、対応が難しくなります。
話を聞いたら、記録に残しましょう。対応状況の記録は組織的にリアルタイムに共有しましょう。
クレーマーの常套句への対応
まとめ
以上クレーム対応の基本についてまとめました。
改めてになりますが、一発で解決する方法はありません。
粘り強く、前向きにお客様と向き合いましょう。
「あの人はクレーマー」だと最初から決めつけないよう気をつけましょう。
クレーマーだと思いながら対応すると、対応が粗雑になり、新たなクレームに繋がったり、解決が遅れたりします。
対応が難しいお客様にこそ、先に述べたフレームワークを一つ一つ、徹底して行いましょう。
クレームの中には、会社のサービス・商品の欠陥があり、こちらに不備がある可能性もあります。
悪質なクレーマーと感じても、謙虚な姿勢を保ち、冷静に対応しましょう。